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2017.5.9

ヨーロッパ日記;No1

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設計の鴨下です。

長い間恋焦がれていたコルビュジエ作品を体感しに、先日ヨーロッパへ出掛けました。

ル・コルビュジエは近代建築の巨匠。
上野の国立西洋美術館が世界遺産に登録されたことにより、
建築関係者だけでなく一般の方にも広く周知されたのではないでしょうか。

彼の残した素晴らしい作品は沢山ありますが、訪れた人は少ないのではと思われる
珍しいものを紹介します。

【サン・ディエの工場(フランス/アルザス・ロレーヌ地方)1946年】

この建築に於いて最も素晴らしい点の一つは、個人所有かつ現役可動中の
縫製工場だということです。

個人所有ですと保存状態を心配してしまうことがありますが、こちらのオーナー(社長)は
コルビュジエが名付け親(ゴッドファーザー)という関係もあり、非常に建物を愛してらっしゃいます。
補修や修繕の際、オリジナルのデザインを大事にすることは勿論のこと、
塗料も当時のカラーチャートを厳密に守って実施をしているそうです。

扱っているものは、エルメス、ルイヴィトン、ドルチェ&ガッバーナ、シャネル等々、ハイブランドの服。
工場の一角に出来上がった製品がずらりと吊り下げられている箇所があったのですが、
ブランド音痴の私にも分かるきらきらしたネームばかりで、技術力の高さがうかがわれます。

ただ、残念ながら、服飾デザインの漏えいという点から工場作業場内は一切撮影できませんでした・・・
ディテールや構成が素晴らしく、出来れば記録に残したかったのですが残念でした。

それでは、許可が取れ撮影できたものの中からいくつかご覧ください。

① モデュロール

re①モデュロールの像(反対側からですが).jpg
コルビュジエが考案をした人体を元にした寸法体系。
ご存じの方が多いと思いますが、モデュロールを表した像です。
(反対側からの写真ですみません、実際は左手をあげています)

「モデュロールは、人体寸法と数学から生まれた、寸法をはかる尺度である。
腕をあげた人間が、空間の占拠を限定する点を与える。
足、ヘソ、頭、頭上にあげた手の指先による三つの間隔は、その内に黄金比を含み・・・
数学的にはもっとも力強い変化がそこにもたらされている」

② 開かれた手

re②開かれた手.jpg
コルビュジエによる都市計画であるインドのチャンディガール。
そこにある像が有名です。

③ サン・ディエの工場外観

re③サン・ディエ工場外観.jpg
コルビュジエが提唱する近代建築の五原則

ピロティ
屋上庭園
自由な平面
横長の窓
自由なファサード

すべてを具現化しているのが見て取れます。

④ ピロティ天井

re④ピロティ.jpg
スラブ毎に色分けされていて可愛らしい!
大胆な色使いに敬服。
そして、日本では考えられない柱の細さ・・・地震のない国ならではの構造です。

⑤ 屋上庭園

re⑤屋上庭園(船の甲板イメージ).jpg
コルビュジエの屋上庭園は船の甲板のイメージのものが多いです。
ユニテ・ダビタシオン、イムーブル・クラルテなどの集合住宅も同じ構成。
写真左手にお墓が並ぶ立地なのですが、斜めに上がっていく壁によって上手に視線が遮られ、
真ん中のピクチャーウィンドウに目が誘導されるようになっています。

⑥ 応接室

re⑥応接室.jpg
ハイサイドライトと傾斜天井。アクセントウォールとコルビュジエデザインのチェア。
色使いと光の取り入れ方、空間構成の妙。

⑦ 階段

re⑦階段.jpg
現代ではよく使われている手法ですが、重くなるコンクリートの階段を軽快に見せるために、
壁躯体と階段を離しています。
そのため光が壁から回り込み、階段が印象的に感じられます。

⑧ 配管カラ―

re⑧配管カラ―.jpg
黄色→電気配管
青色→給水配管
緑色→ボイラー配管(⑦写真)
茶色→排水配管
ポップな見た目で機能的。メンテナンスしやすく、かつデザインの統一が図られています。
梁には予備のスリーブが沢山空けられており、将来対応を予測している所も素晴らしいです。
(写真はトイレの個室上部、これは本当に工場内の写真でなくて残念!!)

・最後に・・・
外観(③写真)から、オリジナルの木製サッシ、途中で変更したスチールサッシ、
そして新しくした木製サッシと、窓フレームが階層、場所によって異なることが分かります。
スチールサッシは改修当時に機能性を求めた上の選択であり、意匠上は不評。
これから全て木製サッシに変更していくそうです。

修繕のタイミングは時の運。
しかし、今の外観はオリジナルではないけれども、下から金、銀、銅、という印象で面白いと感じました。
整っていない現在の状態は今しか見られないものであって、もしかしたら未来からみればレアなのかもしれません。

今後完成するオリジナルデザインのファサードを確認したいという、再訪の楽しみができました。

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