神奈川県川崎市M様/2025年7月竣工
物件種別:戸建(木造)
築年数:30年
家族構成:ご夫婦
M様は30年前、神奈川県川崎市に戸建て住宅を建てました。家族4人で暮らした、思い出の詰まった住まい。その後海外駐在を経て、再び暮らすことになりましたが、家族構成もライフスタイルも、当時とは大きく変わっていました。
そこで選んだのが、思い入れのある建物を残しながら、これからの夫婦二人の暮らしに合わせて住まいをつくり直すリノベーションでした。
(写真の家具は、現状とは異なります。)
海外駐在から帰国したとき、キッチンや浴室などの設備は更新の時期を迎えていました。さらに、海外のゆったりとした住まいに慣れていたこともあり、細かく分かれた間取りを少し窮屈に感じてしまったそうです。
「子どもも独立して、これからは夫婦二人なので。小分けの部屋はなくして、空間を広くしたいと思いました。」
LDKに隣接していた和室や廊下を取り込み、ひとつの大きな空間に。半個室だったキッチンも全体を見渡せる位置に移動し、かねてより希望だったオープンキッチンにしました。
夫婦二人で快適に暮らすだけでなく、家族や友人を気軽に招き、もてなしやすい住まいを目指したリノベーションです。
料理好きなご主人のお気に入りは、なんといってもキッチンです。
以前は半個室のような形で、料理をする場所と家族や来客が過ごす場所との間に壁がありました。今回のリノベーションでは、料理をしながら自然に会話を楽しめる、オープンなキッチンを構想しました。
「お客さんにカウンターに座ってもらって、対面で話しながら料理できるように、奥行きのある天板を採用しました。毎日、2時間ぐらいキッチンに立っているような気がします。」
大きなカウンターを囲み、会話しながら料理をして、そのまま出来たてを振る舞う。今ではご家族やご友人が頻繁に訪れ、自然とキッチンの周りに集まるそうです。
一方、奥様が特に気に入っているのは、LDK周りに設けた収納です。
「生活感を出したくなかったので、なるべくものが出ないように、全部しまえる収納をつくりました」
実はこの収納は、リノベーションを始めてから思いついたものではありません。以前にお住まいだった頃、そして海外駐在中の一時帰国の際にも「いつかここを収納にしたい」と考えていたという奥様。振り返れば、10年近く思い描いていたプランだったそうです。
玄関から水回りへとつながる廊下を、大容量の壁面収納に変更。キッチンに近いことからパントリーも兼ねており、買い物から帰った後の格納もスムーズです。
また、お孫さんが遊びに来るとLDKいっぱいに広がるおもちゃやぬいぐるみは、新たに設けたロフト下の収納へ。
「来客時には全部しまってしまうので、よく『ホテルみたい』とか『生活感がないね』と言われます。2階まで運ばなきゃいけないとか、毎回しまうのが大変だと、だんだん片付けが億劫になってしまいます。無理なく片付けられる収納が、生活感を出さないためのポイントですね。」
長く暮らしてきた家だからこそ、理想的な動線や収納がしっかりイメージできていたという奥様。日々の暮らしで感じていたことが、新しい間取りに生かされています。
今回のリノベーションでは、M様ご自身が積極的に家づくりへ参加されていました。設備や素材を選ぶために多くのショールームを訪れ、YouTubeなどでも情報収集したといいます。
「打ち合わせは毎回楽しかったですね。こちらのアイデアをぶつけて、話していくうちに発見もあって。宿題をもらって、それを考える時間も楽しかった。」
高さ・長さは床や壁にテープを貼って確認し、ときには段ボールなどで実物大の模型をつくり、じっくりと検討を重ねたというご主人。
「例えばキッチンに立ったとき、ダイニングの照明が視界を遮らないか。ロフトは頭上のゆとりを確保できているか、下の収納は使いやすい高さになっているか。仮説検証じゃないですけど、高さや長さを決めるときは、実際の大きさが分かるようにして確認していました。」
図面上の数字だけではなく、実際に大きさを再現し、自分の目で確かめながら決めていく。その丁寧なプロセスが、完成後の使いやすさにつながっています。
設計中に参加したテラジマアーキテクツの邸宅見学会も、大きなヒントになりました。そこで目にしたテレビボード裏の収納は、「ぜひ取り入れたい」と感じたアイデアのひとつ。
「表からはすっきり見せながら、裏側に生活用品を収納できるようになっています。来客時にもパッと片付けられるので、これは本当におすすめです。」
さらに印象に残ったのが、薄く目立たない巾木や窓台、天井まで届くフルハイトドアなどの細部でした。
「それまで意識していなかった部分でしたが、こうした小さな工夫の積み重ねこそが『なんとなく素敵』と感じる空間をつくっているのだと気づきました。」
インターネットで調べるだけでなく実際の住まいを見ることで、新しい視点を得られたと奥様はいいます。
既存の住まいを生かすリノベーションでは、思い描いた通りにできない部分もあります。広いLDKをつくるために壁を減らしましたが、構造上どうしても残す必要がある柱がありました。
そこで柱の間に棚板を設け、飾り棚として活用。海外で集めた思い出の品々を並べています。
「友人から『わざとつくったの?』と聞かれるほど、空間の良いアクセントになっています。開放的なLDKになった反面、インテリアを飾れる場所が減ったので、ちょうど良かったかもしれません。」
以前から使っていた木製のダイニングテーブルやピアノも、新しい住まいへ。モダンな内装との調和を考え、飾り棚やロフトの階段には木を取り入れました。以前の家で使われていたカウンター材も、ご主人が自らリメイクし、現在はお孫さんの勉強机として活躍しています。
思い入れのあるものは、形を変えながら次の暮らしへつないでいく。それも、長く暮らした住まいをリノベーションする魅力のひとつです。
リノベーション後には外構も整え、タイルデッキを設けました。これからはデッキにタープを張ってBBQをするなど、外で過ごす時間も楽しんでいきたいそう。
「みんな、ここが気持ち良すぎて、キッチンカウンターから動かないんですよ。せっかく庭を整えたのに、なかなか外に出ていかなくて。
リノベーションから1年が経った今でも、ふとしたタイミングで『ああ、いい家だね』と話しています。」
かつて家族で暮らしたお住まいは、夫婦二人が自分たちらしく過ごし、大切な家族や友人を迎える場所へと生まれ変わりました。
コンサルタント:熊﨑 雄大
施工管理:今村 修一郎