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2010.8.26

コラム:「SE構法の強さ?:壁」

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■壁倍率とは

さて木造住宅において耐震の話をする際に「壁倍率○倍」という言葉をよく聞きます。
壁倍率は大きい方が強いという印象を受けますが、実はSE構法の構造計算書には「壁倍率」という言葉は出てこないのです。そもそも壁倍率とは何を意味しているのでしょう。

それは在来工法の壁量計算や許容応力度計算をするときに使用する数値のことです。ある一定の強さを持つ壁を基準値として、その壁よりも2倍の強度があれば壁倍率2倍、3倍なら壁倍率3倍としています。この壁倍率は建築基準法で壁の仕様ごとに数値が決められています。たとえば筋かい壁は2倍、合板壁は25倍などです。
それならば壁倍率10倍、20倍の壁を使えば、ほとんど壁を必要としないと考えてしまいがちですが、しかしそうはいきません。なぜなら壁倍率は5倍までと建築基準法で定められているからです。建築基準法では筋かいの太さや合板耐力壁の仕様毎に5倍を上限とし、壁倍率を規定しているのです。さらに壁の長さは910mm以上と、最小幅も定めています。ですから在来工法において、壁で強度を上げようとするとどうしても数が増えてしまい、その結果間取が小さくならざるを得ないのです。

■壁倍率に頼らないSE構法の強さ

それに対しSE構法の壁は、壁倍率では表現できません。SE構法の壁は、釘1本当たりの強さから壁全体の強さを計算しています。この壁全体の強さの数値を使い、立体フレーム解析という高度な構造計算手法を用いて構造設計をします。つまリ、SE構法では強さの基準を壁量計算で求めておらず、壁倍率を必要としないといえるのです。このような高度な設計手法を採用するために、釘1本あたりの強さを確かめる実験(写真1)や、その釘を使った場合の壁の強度を確かめる実験(写真2)などをしています。このように、実験で確認された高度な設計手法を採用することで、高性能な耐力壁の使用が可能になっているのです。

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■在来工法に比べ強度のある壁

表1は在来工法とSE構法の耐力壁をある一定の条件であえて壁倍率で表現したもの。SE構法の耐力壁は5倍を超えるものがあることがわかります。しかも両面貼耐力壁となれば10倍を超えるものもあります。在来工法では5倍までしかありません。単純に考えれば、在来工法の半分の幅の壁で建築できる可能性があるといえます。さらにSE構法の耐力壁の最小幅は455mm。つまり在来工法の最小幅の半分です。この壁を使えば、在来工法では耐力壁にならない壁も有効に活用することができるのです(図2)。
SE構法で開放的な空間や大開口を実現できる理由には、今回説明した「高性能な耐力壁」の存在も大きく貢献しているのです。

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<SE構法の強さ?:強度の立証>はこちら

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