2014.6.26
設計の池田です。
皆さんは襖や扉の引手を意識して見た事がありますか?
先日、日暮里にある襖引手資料館に行ってきました。
資料館と言っても引手職人さん(堀口引手製作所の堀口さん)が自分の仕事を通して集めた引手を
工房に飾ってある小さな場所です。
しかし、小さいと言ってもそこは今も現役の引手職人さんが自ら作ったものや集めたもの…
数百個もの珍しい引手や釘隠しなどがずらりと並びそこらの資料館にはひけをとらない品揃えです。
そして何よりこの資料館がすごい所は、時間があえば現役の職人さんの堀口さんから
直接お話が聞けるところです。
普段何気なく使っている引手ですが、そこには職人さんの拘りや粋が隠れています。
そのいくつかを紹介します。
① 月
こちらは京都の桂離宮に使われている引手。
ちょっとわかりにくいですが「月」という漢字を崩した形になっています。
桂離宮はもともと八条宮智仁親王によって月見の為に建てられた別邸です。
その為、月を映す池や月を見るための仕掛けが色々施されています。
その建物の引手なのでそこにも「月」を入れたのですね。
大きく主張したりするわけではありませんがひっそりと「月」がそこにもある。
気づく人にだけ分かってもらえればいいという粋な遊び心ですね。
② 立鶴
ちょっとコミカルにも見える形ですが鶴がすっと立っている姿をしています。
襖に貼る唐紙には松の木など自然のモチーフを描いたものがあります。
その自然の景色の中にすっと鶴が佇んでいるように見える引手です。
そのほかにも新歌舞伎座の為に作った引手やお寺の修復の為に再現した引手等を制作し、
今も現役の引手職人の堀口さん。
資料館には引手と共に昔使っていた仕事机と道具たちも飾ってありました。
「どんな形の依頼でも断らないで作ってみる」「出来ないとは言わない」という先代からの教えと
職人魂が詰まっているような使いこまれた机は、この資料館の中で一番価値があるものかもしれません。