東京都目黒区E様/2023年9月竣工
家族構成:ご夫婦・お子さま
「特に強いこだわりはないけれど、快適で素敵な家にしたい」―そんな思いを抱く方にこそ知っていただきたいのが、E様の家づくりです。具体的なプランやデザインの希望を細かく決めていたわけではなく、「居心地の良さ」を軸に、設計士と共につくり上げた住まい。プロの提案を受けながら形づくられた空間は、ご家族の暮らしにぴったりと寄り添う家となりました。
天井高は最大4メートル超。南側に大きく開きつつ、バルコニーの壁によってプライバシーが守られています。
15年ほど前に中古住宅を購入し、リフォームをして暮らしていたE様ご家族。立地はとても気に入っていましたが、築年数が経った建物は夏は暑く、冬は底冷えするような環境でした。
「リフォームをして内装はきれいになっても、やはり古い家ですので快適とは言えませんでした。元々、いつか一軒家を建てたいという思いもあり、コロナ禍が落ち着いたタイミングで建て替えに向けて動き始めました。」
リビング収納の下には開閉可能な地窓。空気の流れる道が設計されています。
近隣エリアで注文住宅を建てられる会社を検索するうちに、テラジマアーキテクツのホームページを見つけたというE様。
「外観も内装も好みだなと思い、ご相談に行ったのが最初でした。コンサルタントの原さんの話を聞くと、空気の流れや快適性をとても大事にされていて。『暑さ寒さを解決したい』という思いから建て替えを考え始めた自分たちにとって、ぴったりだと思いました。
普通はいくつも会社を比較して検討するものだと思いますが、もうここにしようと。そう心を決めてしまったので、他で話を聞いても入ってこないだろうと思い、他は一切見なかったんです。」
とご主人は笑います。
「居心地の良い快適な住まい」という明確な軸を持ち、迷わず決断されたE様。その家づくりは実にスムーズにスタートしました。
階段がすっきりとして見えるのは、段板の角を取る加工によって厚みが気にならないから。設計士が細かな部分にまでこだわってご提案しました。
E様ご夫婦は「こだわりが強い方ではない」と話します。
「注文住宅って、何年も調べて『この機器を入れたい』『こういうデザインにしたい』とこだわりを持って進める方が多いと思うんです。でも私たちはあまり詳しくなく、『居心地の良いリビングにしたい』『こんな感じの色合いが好き』というざっくりとしたイメージしか持っていませんでした。なので、設計の伊澤さんには『仕様などご提案していただけると有り難いです』とお伝えしていました。」
これを受けて、逆に設計士からE様にお願いしたのが、「ご夫婦の好みをPinterestで共有していただくこと」。言葉で説明が難しい「好き」を画像で可視化し、そこから設計士は提案のヒントを得ました。
「具体的な仕様を検討する段階では、2週間に1回の打ち合わせの度に『次までにこれを考えてください』と宿題が出て、次回それを決めるという感じでした。想像以上に決めることが多く、驚きましたね。でも伊澤さんのご提案がどれも私たちの好みに合っていたので、あまり悩むこともなくスムーズでした。私たちのようなあまり家づくりに詳しくないタイプには、このご提案ベースの進め方が非常に合っていました。ハウスメーカーの画一的な家づくりでは物足りないけれど、すべてを自分で調べて選ぶのは大変…という方には、このスタイルをおすすめしたいですね。」
奥さまの希望でセラミック天板のダイニングテーブルをチョイス。当初椅子は4脚でしたが、家の雰囲気に合う座り心地の良いものをじっくり選んで増やしていかれたそう。
完成したお住まいの主役は、やはりリビングです。
「ソファに座って過ごす時間が長いので、そこを一番快適にしたかった」とご主人。BoConceptやarflexなどの家具をショールームで選び、グレージュと木の温もりで統一された上質な空間に仕上がりました。
「以前の家と比べて、暑さ寒さは全然違います。地震の揺れも雨音も気にならないですし、本当に静かで快適です。以前はお隣さんの生活音が聞こえたり視線が気になったりしていましたが、それも全くなくなりました。
生活の変化で言うと、一人ひとりに個室が出来たのも大きいですね。1階は個室、2階はみんなで過ごす共有空間という感じでゾーニングが出来て、自然と家族が集まるようになりました。
背もたれが高くゆったりと座れる3人掛けソファを選んだので、家族みんなで座って、それぞれ好きなことをして過ごしています。まさにイメージしていた通りの暮らしができていて、『良かったな』としみじみ感じます。友人を招く機会も増えましたが、皆さん居心地が良いようで長居してくれるんですよ。」
高窓からLDK全体に光が届きます。
「イメージ通り、もしくはそれ以上に満足のいく家づくりができた」というE様に、これから家づくりをされる方へのアドバイスを伺いました。
「こだわり派の方が多いと思うので、参考にならないかもしれませんが」と笑いながら、こう続けてくれました。
「実ははじめ、LDKを1階にしてほしいと伝えていたんです。以前の家の2階LDKがとても暑かったし、将来のことを考えると買い物の度に重い荷物を持って階段を上がるのも大変だろうと。でも『2階の方が天井高を取れて開放的なLDKになります』とご提案いただいて、そのプランを気に入り最終的に2階にしました。
実際に住んでみると、天井が高く窓も大きいことで明るいLDKになり、とても快適。ご提案の通りにして本当に良かったなと思っているんです。
そこで感じたのは、間取りにしてもデザインにしても、最初から強いこだわりを持たなくても良いのかなということ。私たちは『居心地の良いLDK』というテーマと『こんな雰囲気が好き』だけで、満足のいく家を作れたので。
こだわりのある方は、調べたり選んだりする過程も楽しんでいらっしゃると思うんです。でもそこまでではないという方は、譲れない部分をいくつかだけ持って、あとはプロにお任せする。そんな進め方も良いですよと、お伝えしたいです。」
コンサルタント:原 正一
設計:伊澤 杉人
施工管理:関谷 学
E様、ありがとうございました。弊社のお客様は「メーカーで思うプランにならなかったから辿り着きました」というお客様が多いので、E様は非常に珍しいパターンで、【こだわり】がないという点も特徴的ではありました。
お客様の【こだわり】がない、というのは実は設計にとっては難しい面もあります。誰しも「全くこだわりがない」ということはなく、それが意識されていないだけの場合もあるからです。【こだわり】というほど強い意志ではなくても、【好み】程度の意思は皆が持っているものなので、それを「探っていく」のも隠れた設計業務の1つだったりします。
コミュニケーションを通じて、お客様のそうした意思や要望を見つけ出して設計していくのは住宅建築の面白さの1つなので、それをお客様に還元して愉しんでいただけるように、引き続き、頑張っていきたいと思います。