東京都大田区Y様/2023年4月竣工
家族構成:ご夫婦・お子様3人
「毎日、いい家だなと感じます。」 引っ越して2年が経った今もそう語るご主人の表情からは、住まいへの深い満足感がにじみ出ていました。
「本当にストレスがないんです。朝起きてから寝るまでの動きが、すべてイメージ通りで。家の中で無駄な動きがなく、とても快適です。」
注文住宅だからこそ叶えられた、自分たちにとって本当に欲しかった暮らし。 それは「好きなものだけに囲まれ、心からくつろげる空間で暮らすこと」でした。 細部にまでこだわって選び抜いた機器や素材、日常の動線を徹底的に考慮した間取り、そして夫婦でイメージをすり合わせながらたどり着いた美意識の宿る空間。 完成した住まいは、ご家族にとって「帰りたくなる、集いたくなる家」となりました。
LIXILメンバーズコンテスト2023「空間デザイン賞 エクステリア部門」を受賞したアプローチ。
「土地探しをしていた頃、近所にいくつか建築現場があり、そのひとつがテラジマアーキテクツでした。基礎から仕上げまで丁寧に施工されている様子を見て、『ここで建てたい』と自然に思いました。」
ご主人は不動産関連の仕事に携わっており、日頃から多くの建築現場を見ているため、その目は確かです。
「大手ハウスメーカーの現場と比べても、施工の丁寧さ、美しさは群を抜いていました。土地を購入したらテラジマアーキテクツに相談しようと、ほぼ心を決めていました。」
その気持ちを後押ししたのが、耐震構法SE構法でした。
「SE構法は雑誌モダンリビングなどでよく見かけていました。木造でありながら大きな空間を確保でき、私たちの希望である車2台分のビルトインガレージも実現できる。工法もデザインも理想に合っていて、テラジマアーキテクツは総合的にすべてがマッチしていました。」
キッチン右手の扉の先は、洗面・バスルーム・家事室へと繋がります。キッチンから水まわりへスムーズにアクセスできる、効率的な家事動線です。
Y様邸のキッチンはL字型+アイランドという変則的な形状で、奥様のこだわりが詰まった空間です。
「アメリカに住む親戚の家を訪れたとき、大きなアイランドがぽんと設けられていて『これは良いな』と思いました。日本では、アイランドにシンクやコンロを設けることが多いですが、私は調理の様子を見せたいとは思わなかったんです。調理場というよりは、フリースペースとしてのアイランド。朝食を食べたり、子どもたちが課題をしたりと、家族が多目的に使える場所になっています。当初のご提案はペニンシュラ型でしたが、アイランドにしたことでキッチン横の家事室への動線もスムーズになりました。」
一方、ご主人は生活動線に強いこだわりを持っていました。
「家を建てるなら、快適に暮らせるようにしたいと思っていました。そのためには、無駄な動きをせずに済む間取りにすることが重要。自分が朝起きてから会社に行き、夜寝るまでにどんな動きをするのか。1日の動線を詳細にイメージしました。そのおかげで、今はとても快適に過ごせています。」
特に便利さを感じているのが、1階に設けたシャワーブースです。
「夏場は帰宅したらまずシャワーで汗を流し、さっぱりしてから2階へ上がることができます。冬はゆっくりお風呂に浸かりたいですが、夏はシャワーで済ませたい。季節を問わず快適に暮らせるよう、シャワーブースを設置しました。将来、階段の上り下りが難しくなったときにも、1階に水回りがあれば安心できるので、これは是非おすすめしたいですね。」
ご主人こだわりの、エーメイドでオーダーした玄関ドア。重厚感と美しさを兼ね備えた、住まいの顔にふさわしい佇まいです。
「足掛け2年、すべての時間を家づくりに費やしました」語るご主人。その言葉どおり、設計や仕様の検討には並々ならぬ熱意を注がれていました。雑誌モダンリビングをはじめ、インテリアの専門誌や色彩に関する書籍まで幅広く読み込み、空間づくりの参考にされたそうです。
「私たち夫婦は好みが似ていたので、あまりぶつかることはありませんでした。ただ、互いにこだわりが強いところがあり、最初は予算を意識していたものの、途中で『夢のマイホームだから、納得のいくものにしよう』という方向に切り替えました。」
特に印象的だったのは玄関ドア選び。写真で一目惚れした商品をどうしても実際に確認したくなり、ご家族で富山のメーカーまで足を運ばれたそうです。
「質感や開け閉めの重さなど、どうしても自分の目と手で確かめたくて。天井高に合わせたサイズ変更や蝶番の追加といった細かな調整にも対応していただき、納得のいくものを選ぶことができました。富山まで行ったかいがありましたし、金沢にも立ち寄って家族旅行を兼ねられたのもいい思い出です。」
浴槽から緑と空を望む、こだわりのバスルーム。細部まで選び抜かれた設備が、日常に上質なくつろぎをもたらします。
また、旅先での偶然の出会いから採用を決めたのが、ジャクソンの浴槽でした。
「毎年訪れている伊勢神宮の旅の途中で宿泊したホテルに、印象的な浴槽があったんです。家を建てるなら、絶対にこれを取り入れたいと思いました。お風呂は毎日使う場所なので、心地よさを大事にしたかったんです。サイズはホテルよりコンパクトですが、理想の形状のものを採用でき満足しています。」
洗面ボウルや水栓金具にも強いこだわりを持ち、いくつものショールームを巡って選定。特に気に入ったのが、ドイツのBRAVATというブランドで、1階のシャワールームを含め、水まわりはほぼすべてをこのブランドで統一されました。
「この写真の枚数が物語っています」とご主人が笑いながら見せてくださったのは、ショールームで撮影したアイテムや、インテリアのカラーシミュレーションなど、千枚を超える画像ファイル。徹底的に比較検討し、自らの手で好みに合う一品を探し出す。その過程を心から楽しんでいらっしゃった様子が伝わってきました。
「好きなものを全部詰め込んだような家です。『どんなものでも採用できます』という言葉どおり、難しいだろうと思っていた要望も丁寧に受け止めてもらえました。センチ単位での調整にも柔軟に対応していただき、『できません』と言われたことは一度もありませんでした。思い描いていた家をかたちにできて、本当に満足しています。ストレスがなく、心からくつろげる空間になりました。」
家族の一員、オーストラリアン・ラブラドゥードルのあられちゃん。インタビュー当日が、ちょうど1歳のお誕生日でした。
Y様は、半年前にワンちゃんを家族に迎えました。家づくりの段階では想定していなかったことでしたが、新たな家族の一員が加わったことで、暮らしに広がりが生まれました。
「LDKの床にはタイルを採用していましたが、ワンちゃんにとっても快適な素材だったようです。足が滑りにくく、冷たくて気持ちよさそうにしていて、とてもいい選択だったと感じています。
新居に住んでからは、家族が自然と集まる時間が増えました。独立した子どもも、しょっちゅう来ています。ワンちゃんの存在ももちろんありますが、この家が心地よくて快適だからこそ、自然と帰ってきたくなるのだろうなと。家族が集いたくなる家になったと感じています。住まいがもたらす変化のひとつひとつが、暮らしをより豊かにしてくれていますね。」
1階の寝室とウォークインクローゼットに隣接する、ホテルライクなサニタリールーム。スムーズな動線で、朝の身支度や帰宅後のシャワーも快適に。
最後に、満足のいく家づくりを実現されたY様に、これから家を建てる方へのアドバイスを伺いました。
「とにかく、朝起きてから寝るまでの動きを想像することが大切です。たとえば、起きて顔を洗い、新聞を取って2階に上がり、リビングでコーヒーを飲みながら新聞とニュースを見る……といった具合に、一日の流れを具体的にイメージしてみてください。そして、それを簡単でもいいのでメモに残しておくと役に立ちます。季節によって動きも変わってくるので、暑い時期・寒い時期の動線もそれぞれ想像しておくといいと思います。
ライフスタイルは人それぞれですから、自分たちの生活に合わせたプランニングが必要です。どんなに素敵な住宅でも、自分たちの暮らし方に合わなければ意味がない。設計士さんも、理想を叶えたいと思っていても、住まい手に暮らしのイメージがないと、なかなか前に進めません。まずは、どんなふうに暮らしたいかというイメージを持つことが、家づくりの第一歩だと思います。」
コンサルタント:原 正一
設計:深澤 彰司
設計:鴨下 菜穂
この住宅は、都市における静謐な居場所を創出するため、素材と構成にこだわり抜いた設計を行っております。
エントランスには門型のフレーム構造とロートアイアン調門扉を配し、外界と私的領域を明快に切り分けるとともに、建築全体の軸線と美意識を強く印象づけています。フレームの形状は端正かつ力強く、来訪者を迎え入れる象徴的な構えとして機能しています。
エントランスから玄関、坪庭にかけて、壁には外部から内部へと連続する大判タイルを採用しました。素材には、光の陰影を受け止める控えめなテクスチャのものを選定し、時間の経過とともに表情が変化することを意図しています。タイルを内壁まで連続させることで、視覚的な広がりと構成の一体感を生み出し、玄関内部空間においても外部とのつながりを感じさせる設計としています。
玄関には、特注製作による木製ドアを設えました。素材には堅牢で美しい木肌を持つ米松無垢材を用い、触れたときの質感や重厚な開閉動作を通じて、空間への期待を高める役割を果たしています。
玄関の突き当りには、ジャパンディスタイルを想起させる坪庭を配置。自然素材による石や植栽の組み合わせが、空間に呼吸を与えるような感覚を醸し出します。小さな領域ながら、視線の抜けと奥行きを感じさせ、住まいに静寂と精神性をもたらす構成としています。
階段は、ガラスの壁面に囲まれた浮遊感のあるデザインを採用。光の取り込みと空間の連続性を強調することで、階段を単なる上下移動の装置ではなく、建築的な「体験」として位置づけています。構造体には木材を用い、軽快さと安定感を両立。周囲との対話を生む場となるよう意図しています。
リビングには、空間との関係性を細かく調整した造作家具を設置。収納と造形美が融合することで、生活感を抑えながら設えの美しさを強調しています。間接照明の計画にもこだわり、時間帯や季節によって空間の表情が穏やかに変化するよう設計。正面壁には1階玄関と同じ大判タイルを使用し、空間の広がりと統一感を創出しています。
ダイニングでは、空間の象徴とも言えるルイスポールセン社のアーティチョークを照明器具として選定。彫刻的なフォルムと光の分散効果により、食卓に立体的な光と豊かな陰影をもたらすとともに、インテリアの核としての存在感を放っています。
キッチンは、住まい手の調理動線や収納要望に応じたオーダーメイド仕様。素材選定から設備計画まで一貫して行い、視覚的に美しく、機能的にも快適な空間を実現しています。周囲との連続性を意識し、リビングと同素材の素材を使用することで、キッチンが単体の機能空間ではなく、住まい全体の構成要素として調和するよう配慮しました。